駅前で車椅子の男性から道を聞かれた。某クリニックへの道だったので、それならわかるので案内した。
歩きながら「足がご不自由なんですね」と言うと「ああ、事故でね」と言う。
「40年くらい前、静岡のほうで日本坂トンネルの事故があったでしょ。ご存知ですか。あれで・・・」と続いたので驚いた。
日本坂トンネルの事故といえば私でも、トンネルの中で多重衝突からものすごい火災になったという程度は覚えているし、惨状を物語る写真が新聞に大きく出てた記憶もある。
「足も、肋骨も何本も折れました。救急士が・・・私は死んでると思ったんでしょうな。長いことほっておかれまして」
ひえー。
クリニックはすぐそばで、陸橋がつながっているので車道を渡ったりせずに行くことができる。スロープもある。でも、前方にスロープがあるのを見ただけで、男性は「あ、坂が・・・」と困った声を出す。それで、途中から私が車椅子を押すことにしたが、車椅子を押すのってけっこうたいへん。すぐに曲がってしまうし。わずかな距離でも何回も溝に脱輪。向こうから来た女性が「あ、手伝いますよー」と言って、慣れた手つきでひょいと両輪を持ちあげてくれたときは感心した。
それで気づいたが、道路(この場合は陸橋だけど)って両端が下がってるんだね。だから、意識的に真ん中を通らないとすぐにひょろひょろと横にそれて脱輪、となるのだ。自分の足で歩いているときはそんなことまったく思わなかったし、だいたいどっちかに寄って歩くよね。
そんな感じでよろよろしながら絶えず「ああっ」とか「わっ」とか言ってるへなちょこ介護人だったもんで、事故の話をゆっくり聞くこともできなかったけど、短時間でもいろいろ気づかされた。
そもそもスロープを設置しただけで弱者にやさしい、とは言えないことはよくわかったぞ。
ていうか、あんまり役に立たなくてすいませんでした。
写真は全然本文とは関係なく、このあいだの第七藝術劇場の前です。