本歌取り

Twitterの朝ドラ界隈ではヒロインの彼氏・貴司が作った短歌「君が行く新たな道を照らすよう千億の星に頼んでおいた」が万葉集の狭野弟上娘子(さののおとがみのおとめ)の歌「君が行く道の長手を繰り畳ね焼き滅ぼさむ天の火もがも」の本歌取りであることが明かされた昨日から、俵万智がそのことに気づけず悔しがったり岩波書店のアカが「うちふるえました」とツイートするなどちょっとした騒ぎになっているが、この人の名前(狭野茅上 娘子とも書くようだ)を覚えるのに丸一日かかってしまった。そしてまた忘れるだろう。なので、ここに書いておこう。

ともあれ、本歌取りというのはレイヤー構造であるわけなのだなあと思う。元の歌は激しい情念のこもった歌だが、貴司の歌は穏やかで、距離をおいてみつめている風である。だが、本歌取りだとわかった人には元歌の情念の世界が透けてみえる、みえてほしいと作者は願っているということか。
掛詞とかもそのひとつなのだろうけど、短い中にも何重にも世界が重なり、複雑な景色をみることができる、そのための技法が長い間に蓄積されてとんでもないことになっているようだ。これはやはり近づかないほうがよさそうだ。

狭野弟上娘子は当時の女官だったそうだ。女官ってどんな服を着ていたのかなと思い、ぐぐって出てきた画像を参考にした。チマチョゴリと似ているね。

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