いや、私もおばちゃんなんですが、私より少し上のおばちゃんたちです。
入院のたびに当然部屋が変わるし、同室のメンバーも変わるし、なんなら入院中も退院する人がいれば入院してくる人、別の部屋から移動してくる人、と入れ替わりがけっこう激しいわけだが、あるとき、同室のおばちゃんAが電話でご家族と話していた。Aさんは声が大きいし、それでなくても仕切りはカーテンだけなので電話はまる聞こえ。部屋の外に出てかければいいのだが、Aさんは寝たきりに近い状態。ときどきリハビリを受けている。
「お寿司が食べたい…今度くる時、助六みたいなん買うてきてほしい」
ほー、あんなのが好きなんだ。
助六と言えば、巻き寿司といなり寿司がセットになったやつ。あれがねえ…。
その翌々日(たぶん)、またAさんが電話。
「昨日な、うまき(うなぎを中に入れて巻いたお寿司?)買うてきてくれたやろ。あれはようないわ。助六がよかってん」
そうなんだ。「うまき」のほうがよさそうだけどな。
その後、Aさんは別の部屋に移動、別の人、おばちゃんBが入ってきた。このときはコロナのせいで、部屋の外に自由に出られないときだったと思う。
あるとき、看護師さんが部屋に入ってきて
「Bさん、家族さんから届きましたよ。巻き寿司」
え、この人(いつもカーテン閉め切ってるので顔をみたことないが)も巻き寿司ファン? 助六じゃないけど、助六の半分は巻き寿司だもんな。ほー!
その後、私は一旦退院。次に入院したときだと思う。お隣のベッドのおばちゃんCがおうちに電話してる。
「ここの食事が…今日も鶏肉をなにしてな、ご飯の上にのせたあったんやけど、あんなん食べられへん…うん…巻き寿司買うてきて」
また巻き寿司! なんで?! なんでみんなそんなに巻き寿司、好きなん?!
まあ確かに、病院食ってごはんもおかずも冷めきってしまってるところが問題で、これがあったかかったらまだ食べられただろうになと思うことが多い。その点、巻き寿司はもともとさめてるのでそんなこと関係ないし、全体に味がついてて食べやすいといえば食べやすいか。うーん。でも、助六といえば私のイメージは「むかし、お通夜の席で配られたやつ」だ。積極的に食べたいとは思わないし買ってきてほしいとも思わない…。
でも、それならおまえはそういうとき、お腹はすいてるけど病院の食事はちょっと、というとき、何を買ってきてほしいかといわれたら、どうしよう。
おいしいケーキか、おいしいパン、かな…いや、どうだろ…?? コロッケとかどうです? いや、ひとに聞くんじゃないってば。
写真は近所のメタセコイア。下から見上げて。