昭和40年は大昔

どこかでだれかが紹介していたのを読んでおもしろそうだったので山野浩一「鳥はいまどこを飛ぶか」を図書館で借りて読んだ。
図書館にあったのは昭和50年刊の早川文庫で、巻末にはコンピューターで管理される前の時代の遺物ともいうべき貸し出し票(だったっけ? 返却期限がゴム印で押されているやつ)が張り付けられ、紙も相当に黄ばんだ本だが、表題作は今読んでもおもしろい野心的な作品だと思った。

で、これは短編集なのだが、その中に「地下鉄紳士」という吸血鬼(!)の話も収められている。その冒頭を読んでびっくりした。下のようなものなのだが。

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さて、みなの衆。今、日本にどれだけ地下鉄があるか御存じかな。御存じの方にはくどいようで気の毒だが一応紹介させていただこう。
東京に5本。丸の内線、荻窪ー池袋。銀座線、渋谷ー浅草。日比谷線、中目黒ー北千住。都営線、大門ー押上。それに、東西線、高田馬場ー九段下が開通している。その他、中野坂上ー方南町があって、京王帝都、京成、が一駅間地下へ潜っている。
大阪には三本。新大阪ーあびこ。大阪港ー本町。玉出ー大国町。その他、京阪が天満橋ー淀屋橋、阪神が少し地下を通る。
名古屋には一本。名古屋ー東山公園があり、名鉄、近鉄が名古屋付近で地下鉄となっている。
また、阪神が神戸市で春日野通ー元町、阪急が京都市で西院ー河原町を地下鉄として走っているが、大きく地下に潜っているものは、その程度であろう。(以上昭和四十年六月現在)

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ひえー。ということは、昭和40年には、長堀鶴見緑地線(花の万博にあわせてできた)や今里筋線(まだ乗ったことない)はなかったのはもちろんだけど、谷町線や千日前線もなかったのか?! 中央線も本町より東はなかったのか。四つ橋線も玉出ー大国町って・・・がくぜん。考えたら「ほとんど50年前なんだからそんなもんでしょ」な話かもしれないけど、よくまあそれ以降どんどん地下鉄をつくったものだ。
東京も当然「5本」のはずがないけど、あの(現在の)路線図を思い浮かべただけで頭が痛くなりそうなのでそれは横においとく。

「地下鉄紳士」には「BG」という言葉も出てきて「うわっ」と思ったが、この作品では作者は意図的にその時点での風俗をふんだんに取り込んでいる。古びるなら古びよ、という気持ちだったのだろう。それはそれでよし、だ。

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